鍼の歴史について少し紹介しましょう。
鍼の元は石器時代の古代中国において発明されました。石鍼(いしばり、石針とも書く)と呼ばれるこの鍼の元は
主に膿などを破って出すのに使われました。
石針には今の縫い針のように小さな孔があり、そこに紐を通して馬上で腰にぶらさげて持ち運んでいました。
石針が後に動物の骨を用いて作られた骨針、竹でできた竹針、陶器の破片でできた陶針などになっていきました。
現在使われる金属の鍼は戦国時代頃に作られ始めたと言われています。
この鍼が黄河文明で発展した経絡(ツボを数珠状につなぐルート)の概念や臓腑学(ぞうふがく)、
陰陽論(いんようろん)などと結びついて鍼治療が確立していきました。
『黄帝内経(こうていだいけい)』と呼ばれる中国最古の医学書の中に、
当時使われていた鍼を特徴で9つに分類した「古代九鍼」が紹介されています。
日本において鍼灸・漢方薬などの伝統中国医学の概念は、遣隋使や遣唐使などによってもたらされました。
奈良時代の律令制において既に鍼師(官職名としては針博士)が医師、按摩師などと共に存在していたことがわかっています。
以降、鍼師は医師などと共に日本の医療の中核を担ってきました。
また、日本独自の鍼の発展として、984年に丹波康頼(たんばのやすより)によって編纂された日本最古の医学書『医心方』を見ると
鍼治療が当時の中医学概念より簡便化されたものになっていることがみられます。
刺鍼の手法においても安土桃山時代に御薗意斎(みそのいさい)が金や銀の鍼を木槌で叩いて打ち込む打鍼法や、
江戸時代に盲人の杉山和一によって考案された管鍼法(鍼管を用いて鍼を刺す方法)などがあります。
特に杉山和一の影響は大きく、管鍼法は現在日本の主流の技法になっております。また、今はステンレス・銀・白金・金などの鍼が使われ、鍼治療における消毒法の研究から生まれた
EOG(エチレンオキサイトガス)による滅菌鍼(ディスポ−ザブル鍼)を用いて鍼灸治療が行われています。
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