鍼灸治療は、ツボ(経穴)に鍼灸刺激を行って病気を治して行く治療方法ですが、どのツボを使って治療するか、
その選択は、東洋医学的な様々な考え方に基づき行います。
その考え方について少し述べますと、先ず、@解剖学・生理学的立場(身体のしくみ・働き)からツボ処方をする方法です。
例えば、肩凝りがあると凝っている肩の筋肉の上にあるツボを処方したり、偏頭痛(血管性頭痛)がある時は、
首のノドボトケの横にある頸動脈洞(頭の血圧をコントロールする圧受容器)にあるツボを使う方法です。
また、A臓腑経絡理論と云う漢方の医学書にある古典的理論を基にツボ処方をする方法があります。
例えば、下痢便秘の人には消化器疾患に関係する経絡(ツボを数珠状に結ぶルート)である「大腸経」のツボを処方したり、
風邪をひいた時は呼吸器疾患と関係ある経絡の「肺経」のツボを使う方法です。
また東洋医学には、B「特効穴」を使ってツボ処方をするやり方があります。この「特効穴」というのは、
西洋医学にはない東洋医学独自の考え方です。2000年も続く伝承医学としての鍼灸の歴史の中で経験的につちかわれた考え方で、
「そのツボが良く効く理由・論拠はわからないが、誰が治療しても、なぜかこの症状にはこのツボがよく効く」と言われてきたツボを処方する方法があります。
例えば、「胃痙攣には、裏内庭欠(足の人さし指裏側つけね)」・「痔には、百会欠(頭の頂き)」・「逆子には、至陰欠(足の小指の爪はえぎわ横)」という処方です。
ただ近年、逆子についてはその治効メカニズムがわかって参りました。「至陰欠」にお灸をすえると子宮の血流が良くなり、
その事によって子宮が柔らかくなります。したがって逆子が元の位置に戻り逆子が治ると云うように、
その効く過程が解明されてきたものもありますが、この「特効穴」による処方と云うのは、かなりユニークな鍼灸治療法と思います。
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