今や2〜3人に1人の割合でガン患者さんが増加し、抗癌剤の副作用としての「足のシビレ」に悩む人が多発して参りました。
一般に「シビレ」とは、身体の外からの刺激がないのに自覚する「異常感覚」、外的刺激によって異なる感覚が生じる「錯感覚(さくかんかく)」、
触覚・痛覚などの皮膚感覚が低下する「感覚鈍麻」、筋肉の脱力が主の「運動麻痺」などの症状を指し、
いわゆる「感覚障害」のみならず「運動障害」をも含めて「シビレ」と表現しています。この「異常感覚」とは、
本来身体に診られる「痛い」、「温かい」、「冷たい」、「触れる」等の感覚とは異なり、生理的には診られない「ジンジン」、
「ビリビリ」、「ジャリジャリ」「ものが貼り付いた感じ」等をいいます。ガン患者さんは、抗癌剤の点滴を受療するに従い、
その副作用として、足の裏に強くこの「異常感覚」が現れるようになります。
「シビレ」は、頭痛、めまいと同様に数多く自覚される症状ですが、その症状の成り立ちは様々です。「シビレ感」の原因として、前述の化学療法の副作用以外に、糖尿病、脳血管障害後遺症(脳卒中)、腰部脊柱管狭窄症など、末梢神経障害、栄養障害、脊髄疾患、精神疾患などがあげられます。
一般的に、「シビレ感」の治療としては、薬物療法、神経ブロック、理学療法などの保存 療法が中心で、
一部には外科的手術が行われています。
西洋医学では「シビレ」は最後まで残るといいます。「シビレ」に対する鍼灸治療の現状を述べますと、1970代から始まった鍼灸の基礎・臨床研究で「厚生省特定疾患SMON調査研究班の協力研究員として長年「シビレの異常感覚」の国家レベルの研究に携わってまいりました。その中で「時間がかかりますが、鍼灸治療により異常感覚の範囲には変化が診られないが、異常感覚の程度が軽くなる」ことがわかりました。いわゆる「シビレの異常感覚を忘れている瞬間、気にならない瞬間が日常生活の中でみられる」という一定の成果が得られました。
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