日本人女性が最も悩む「肩こり」。そして、更年期障害の症状の中でも、肩こりは一番多い症状です。
しかし、更年期障害の治療をしても改善する肩こりは少なく、肩こりの適切な治療を受けずに、
かえって症状が悪化してしまう方もあります。今回は、「更年期障害の症状と肩こり」についてお話したいと思います。
更年期(閉経の前後5年間)に生じる多種多様な症状の中で、
身体の組織上の問題はなく機能的な原因による症状を「更年期症状」といいます。この中で「日常生活に支障をきたす
更年期症状」を「更年期障害」と定義します。したがって、少し疲れ易い・睡眠不足・汗をかき易い等、
軽く気になる程度の症状は、そもそも更年期障害ではありません。
更年期障害に多い症状は、@肩こり Aほてり(ホットフラッシュ) B汗をかきやすい C不眠等々で、
その「肩こり」のメカニズムは、閉経間近になってくると、女性ホルモンのエストロゲンが減少し、エストロゲンの欠乏は、
筋肉や局所の血液循環に悪影響を与えます。
血流が低下した筋肉は酸素不足や栄養低下によって硬くなり、肩こりを生じます。
ところで、更年期に起こる肩こりは、本当に更年期障害の症状なのでしょうか? 若い頃からずっと肩こりに悩んでいた人が、
「更年期にさしかかったら症状が悪化したので更年期障害だ」、と決めつけていませんか?
先に述べたように更年期障害は、女性ホルモンが減少することで、様々な不快な症状が起こると考えられています。
安井先生らの研究では、更年期障害症状を緩和する目的で、女性ホルモン補充療法を行った結果、
更年期障害の特徴的な症状「のほせ・ほてり」には80〜90%の効果があるものの、
「肩こり」に対しては40%しか効果が認められない、と報告しています。すなわち、肩こりの原因が女性ホルモンの減少によるものでなければ、
いくら女性ホルモンを補充しても、つらい症状は改善しないということを示唆しております。
「肩こり」には、婦人科疾患(更年期障害)以外に、整形外科疾患(むちうち症、
五十肩、頸椎症など)、内科疾患(胆石、心筋梗塞、胃炎など)、耳鼻科疾患(鼻炎、副鼻腔炎など)、
精神神経科疾患(うつ病、心身症、その他心理的ストレスなど)、様々な原因があります。
更年期障害の主症状である発汗異常やほてりがなく、肩こりだけが症状の場合は、
更年期障害ではなく、それ以外に起因する「肩こり」の可能性があります。「肩こり」を「更年期障害」と思い込むと、
その症状を悪化させる要因となります。つらい「肩こり」の治療を受ける際は、
肩こりの原因となる病気をしっかりと見極めた上で受療することが大切です。
「肩こり」に最適な治療法として鍼灸治療をお勧めします。
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