前回に引き続き今回は、施術者の施術前後の手指の消毒方法
及び患者さんの施術前後の皮膚消毒法の現況についてお話したいと思います。
今から35〜40年前は、エイズが話題になる前で消毒の対象になっていた病原微生物は主にB型肝炎ウイルス
(以下B肝という)でした。つまり如何にB肝に感染しないようにするかという研究がなされている時代でした。
例えばB肝に有効な塩素系の薬液(次亜塩素酸ナトリウムなど)があっても、これは手指や皮膚を荒らす為、
それらの消毒には不適でありました。当時のB肝感染に対しての東京都の答申を見ると、
「ブラッシングしながら15分間流水で洗う方法が最適である」と云う報告があり、
鍼灸界においてもB肝に対する薬液による消毒は難しい時代でした。また、当時は病院や治療院では手洗い洗面器を
活用した薬液による手指の消毒を多用し、手洗い洗面器内の消毒液の汚れがかなり気になる衛生状態でした。
その後の研究からB肝に有効なイルガサンDP300とエタノールを混ぜて作った
イルガサンアルコール(特殊アルコール)が多用されるようになりました。
現在、施術者の施術前後の手指の消毒方法及び患者さんの施術前後の皮膚の消毒法として、エタノール、ヒビテン、
逆性石鹸が最も使用されており、ウエルパス(エタノール+塩化ベンザルコニウム)、
ヒビスコール(エタノール+グルコン酸クロルヘキシジン),流水のみの方法も行われています。
これらは手洗い洗面器は使用せず消毒液は流水で手洗いするので衛生面では以前に比し大変向上しました。
また、最近普及しつつあるラビング法(擦式法;右爪〜右手首・左爪〜左手首・右手首〜右肘・左手首〜左肘、
再び左右爪〜手首と云うように手先〜肘の部分を5っの部位に分けて、
各部位で3ml程の消毒液を漬け乾くまで擦り込む方法)による消毒薬の利用は、治療院ではほとんど行われておりません。現在,医療の現場での手指の消毒に広く用いられているラビング 法(擦式法)が治療院では実施されていないいことは,感染事故発生の可能性を考えると、今後治療院において本方式の早期普及が望まれます。
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