治療院への問い合わせの中で、「鍼灸治療の消毒はどうなさっているのですか?」という声を時々聞かれます。
今から35〜40年前は、鍼灸界においては消毒法・滅菌法がきちんと確立しておらず、
煮沸消毒やエタノール消毒など当時の医療施設における消毒法・滅菌法を模倣した形で行っていました。
また、衛生概念も低かったのですが、その後、B型肝炎ウイルス・エイズウイルス等のウイルス感染の問題発生とともに
鍼灸界においても消毒法・滅菌法の関心が高まり多くの研究がなされ、その結果、
今現在の鍼灸治療現場における消毒法・滅菌法が確立されました。
そこで、その現況について、鍼・シャーレなどの鍼灸器具の消毒方法と、
施術者の手指の消毒方法及び患者さんの皮膚消毒方法に分けて若干紹介したいと思います。
先ず、鍼・シャーレなどの鍼灸器具の消毒方法としては、ディスポーザブル鍼(使い捨ての滅菌鍼)、
オートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌器による滅菌)、アルコールによる清拭、紫外線消毒器などが多用されています。
その昔よく使用した煮沸消毒は、煮沸による微細な振動が鍼先を傷めやすいことと取り扱いの面であまり利用されなくなってきました。
また、ガス滅菌器は病院では活用されていますが消毒費用と取り扱いの面で鍼灸治療院ではほとんど使用されておりません。
ところで鍼治療には旧来より「銀鍼(銀製の鍼)」がよく用いられていますが、
オートクレーブで銀鍼を高頻度に滅菌した場合に金属の劣化や銀鍼の表面が変色するなどの理由で
オートクレーブでは銀鍼の滅菌はできません。オートクレーブではステンレス鍼の滅菌しかできませんでした。
しかし近年、エチレンオキサイトガスによるガス滅菌器の出現により銀鍼の滅菌が可能になり、
今は銀鍼もステンレス鍼もディスポーザブル鍼として販売され、その普及率が高くなってきております。
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