「お尻のえくぼの辺りから太ももの後にかけて、筋肉痛を感じる、肉離れのような鋭い痛みがある、何かで叩かれたような鈍痛がある、
時には足先が痺れることがあるのですが、鍼が効きますか?」という問い掛けがよくあります。
これは“ジメジメした梅雨の時期”や“底冷えのする冬の季節”に多い「坐骨神経痛」の典型的な症状です。
主に腰椎が原因で起こる病気の症状として、一番腰痛が多く、次に坐骨神経痛を訴える人が多く見られますが、
その原因となる疾患は様々です。今回は先ず坐骨神経痛を生じる病気について述べ、次回はその治療法についてお話ししたいと思います。
坐骨神経痛は、末梢神経のなかで最も太く長い神経です。腰椎の第4、5番目から出る腰神経と
仙椎の第1〜3番目から出る仙骨神経からなり、お尻の梨状筋の下を通って太ももの後を下行し、
膝の裏で総腓骨神経(そうひこつしんけい)と脛骨神経(けいこつしんけい)に分かれます。つまり坐骨神経痛は、
神経が腰椎の隙間から出て骨盤をくぐり抜け、お尻の筋肉から顔を出す間のどこかで、
圧迫や絞扼(こうやく:締め付けること)などの障害を受けた為に発症すると言えます。
坐骨神経痛の原因は、年齢により異なりますが、若い人で最も多いのは、腰椎椎間板ヘルニア、
次に梨状筋症候群があげられます。腰椎椎間板ヘルニアは、比較的急激に発症し、ほとんどの場合、
左右どちらか片側の坐骨神経に痛みが出現しますが、ヘルニアの位置や大きさにより左右両側に見られることもあります。
梨状筋症候群は、比較的緩徐に発生し、梨状筋の間で坐骨神経が締め付けられ、
仕事や運動でストレスが加わり発症することが多いようです。
一方、高齢者では変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などの骨の変形に起因する病気に多く見られ、
また帯状疱疹により坐骨神経痛を発症する場合もあります。その他、年齢に関係なく特殊な疾患として、
脊髄腫瘍や骨盤内腫瘍などが原因で生じるケースもあります。
上記の椎間板ヘルニアや変形性腰椎症のような身体的な問題を伴う病気が無くても坐骨神経痛が発症することが有りますが、
この場合症状は1週間程度で自然に軽快することが多いようです。1〜2週間たっても軽快しない場合、
激しい痛みが生じる場合、腰痛や下肢のシビレ、筋力低下などを伴う場合はすぐに鍼灸治療を受けましょう。
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