今回は、つらい手・指や手首の症状として「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」について紹介します。
親指(母指)を広げると手首(手関節)の母指側の部分にある腱が張って皮下に2本の線が浮かび上がってきます。その2本の線の1本は短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん:主に母指を伸ばす働きをする腱の一本です。)と言い、もう1本の線は長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん:主に母指を広げる働きをする腱の一本です。)と言います。これら2本の腱は手首の背側(手の甲側)で腱鞘(けんしょう:腱のトンネル)を通り抜け手指の先に付着しています。「ドケルバン病」とはこの腱鞘(手背第一コンパートメント)を通るところに生じる「腱鞘炎」のことを言います。つまり手首(手関節)の母指側にある腱鞘(手背第一コンパートメント)とそこを通過する腱に炎症が起こった状態で、その症状は、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側が痛み、腫れてきます。母指を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い痛みが走ります。
次に原因・病態(病気の成り立ち・病状)ですが、妊娠出産期の女性や更年期の女性に多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのが特徴です。そして、母指の使いすぎによる負荷のため、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷んだりして、さらにそれがこすれ刺激され、悪循環が生じると考えられています。特に手背第1コンパートメント内には、上記の2種類の腱を分けて通過させる隔壁が存在し、これがあるために腱鞘の狭窄が生じやすくなります。
最後に「ドケルバン病」の鍼灸治療は、手指・手関節・腕周囲のツボをねらい鎮痛効果を目的に鍼治療を行います、また普段は局所の安静をはかるため、固めの包帯を母指から手首にかけて巻く・補装具の手袋で手関節の動きを制限し母指固定しておきます。それでも痛みが強くなる時は、医療機関に相談しましょう。
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